男は、子供が生まれてから時間がたって父親としての自覚が芽生えてくる、という話がある。
自分を引き合いにしてみても、ある程度理解できる話である。
長子は、誕生の瞬間に立ち会えなかったこともあり、病院についたらポンと生まれていた、という状況だった。
状況だけが要因ではないだろうが、生まれた後の子供と関わっていく中で、だんだん父親になっていく、というのが大方の男性の姿ではないだろうか。
かたや女は、妊娠を自覚してから数か月のアドバンテージがある。
ずっとお腹の中で、比喩ではなく一心同体であったわけだから、父親なんかとは比べ物にならないほど早く、母親になるのであろう。
さて、その後の思考についても、男女差が顕著だと思う。
女性は、脳みその構造がガラッと入れ替わるというか、変性する、別物になると言っても過言ではない。
ホルモンのせいだなんだと言われているが、まるで別人というレベルで考え方が変わってしまうので、夫側としては面食らうものである。
男性は(まぁサンプル数ひとつの私の場合だが)別の思考回路が新たにつくられる、というイメージが一番近いかと思う。
今までの回路はそのままで、新たに父親という思考回路が形作られる。
父親としてふるまうべき状況では、そちらの思考回路(父親回路)を使うし、会社や趣味の場では今まで通りの回路(旧回路)を使用する。
やっかいなのは、旧回路と父親回路が並列的に存在しているので、
・妻とのやり取りで切り替えが効かないときがある
(どちらの回路を使うべきかとっさに判断できない)
・旧回路と父親回路が拮抗した場合、ジレンマに陥る
という問題がたびたび発生する。
妻が子供にかまけて相手にしてくれない、とか、子供の都合で自分の趣味の時間が削られるという事象に対して、父親回路では理解できるのだが、旧回路が納得できない。
父親回路の方が圧倒的に優位というわけではなく、あくまで旧回路と同格なので、自分の頭の中でうまく優先順位付けができないのだ。
理性でなんとか父親回路を優先に切り替えて、その場ではコトを収めたとしても、ないがしろにされた旧回路には負荷がかかっている。
そのストレスは、しんしんと降り積もって、心に負荷をかけ続ける。
妻は、思考回路が変性し、母親回路だけで生きているので、全ての意思決定がクリアだ。
母親なので、子供にとってはそれでいいし、家庭にとってもそれでいいのだが、夫としては旧回路をないがしろにできないので、つらいものがある。
旧回路をないがしろにするということは、自分のそれまでの人生を否定することにもなりかねない。
それは今後の人生の意味にも直結する問題で、おいそれと父親回路で旧回路を塗りつぶす、というようなこともできないのである。
うまく折り合いをつけて生きていけるといいのだけれど。
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