機械式時計の数ある複雑機構の中でも、3大複雑機構に数えられるトゥールビヨン。
元々の値段も相当な高級ブランドのものでも、トゥールビヨン搭載モデルは、さらに一段と高価になるイメージがあります。
トゥールビヨンとは…トゥールビヨン(Tourbillon、フランス語で「渦」の意 )は、懐中時計など可搬で任意の姿勢をとりうる(任意の方向に重力による加速度が掛かる)機械式時計において、内部の一部の構造全体を回転させることにより、姿勢差による系統的なズレをキャンセルし克服する機構ないしそれを採用した時計、および特にその中心部であるそのような脱進機のことである。「ツールビロン」「タービロン」とも呼ばれ、フランス人時計師アブラアム=ルイ・ブレゲの発明がその嚆矢とされている。
部品の点数が増える、各部品を極めて軽くかつ高精度に作らなければならない、微妙な調整が必要で組み立てに高度な技術を要求される、1本製作するのに長い時間がかかるなどの理由で、トゥールビヨンは非常に高額であった。そのため長らく、パーペチュアル・カレンダー、ミニッツ・リピーター等と並ぶ最高級機械式時計の代名詞のひとつとなっていた。
そんな憧れの機構トゥールビヨンですが、最近インスタグラムの広告なんかでよくあるのが、クラウドファンディング形式で「トゥールビヨン搭載の機械式時計がこんなにお安く!」というもの。
私の知っているトゥールビヨン搭載モデルとは桁が二つ安く、最初は偽物なんじゃないの?と疑っていました。
ところがどうやら、実際にトゥールビヨンが搭載された、れっきとした機械式時計のようです。
とはいえ、数十万円で売られて、果たしてトゥールビヨン搭載モデルを購入したくなるものかどうか。
オーデマ・ピゲやランゲアンドゾーネのトゥールビヨンモデルだからこそ意味を持つ。
そんな気がしています。
「トゥールビヨン」という機構自体に価値があるのなら、クラウドファンディングされている無名の時計も、千万円単位の値がついてもおかしくないところ。
それが、数十万で売られてしまうということは、機構自体にはもうそこまで価値がないということの証左なのかもしれません。
クォーツ時計が発明されて、携帯電話が発明されて、いまやスマートフォン、スマートウォッチ。
純粋に正確な時刻を知る、のであれば、とっくの昔に機械式時計はその役目を終えているといっても過言ではないでしょう。
それでも我々が機械式時計に憧れ、大枚をはたいて購入するのは、機械式時計に高級品・ブランド品・嗜好品・芸術品・工芸品、そういった価値を認めてのことだと思います。
そこで激安のトゥールビヨン搭載時計を出されたとて、果たして食指が動くものか。
はたまたジェネリック複雑機構時計として、新たな市場を開拓できるのか。
密かに注目しています。
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